それで結局、僕はとにかく這い上るより外に道はなかった。しかしこれがまた、ワトソン君、なかなかの大仕事なのだ。はるか底の方では、滝壺が物凄く鳴り響いている。僕は決して妄想的な人間ではないが、しかし、実際のところ、どうも滝壺からは、モリアーティ教授の唸り声がきこえて来るようにさえ思われた。それにまたもし一歩を誤ったら、それこそ百年目だ。実際、草の根がとれて、手が放れたり、足が岩の切り角から辷(すべ)ったりして、もうしまったと思ったことも、一度や二度ではなかったよ。しかし僕はとにかく、上へ上へと這い上った。