ワトソン君、しかし僕はこう云う想定をするのにも、決して手間取らなかったよ。その中(うち)にまた懸崖の上には、凄い顔が現われて、こっちを見下している。もう第二の石の来る前兆である。とにかく僕は小径の上に這い下りた。もちろん僕はこうしたことを、落ついてやってのけたとは云わないよ。何しろこの這い下りることは、這い上るのに何百倍して、困難なことだったからね。しかし僕はもちろん、危険などと云うことを考えてはいられなかった。僕が出張りの角に手をかけてぶら下った時に、また第三の石が落っこって来て、間髪の間を唸り越えて行った。半分はただ辷り落ちに落ちて、ただ天祐で、とにかく平なところに着陸した。皮膚は擦りむけて、小径の上に血痕が滴りついた。それから僕は遁走を続け、暗夜の中を十哩(まいる)の山路を突破し、一週間の後には僕はフローレンスに現われたのだ。もちろん現世の人間と云う人間は、僕の行方などを知るはずはなかったのだが、――