しかもロンドンにおいての、事態の進捗は、どうも僕が予期したようにうまくはいってくれなかった。モリアーティ一味の者に対する審問は、その中(うち)の最も怖るべき人物で、僕に対しては最も復讐の念に燃えている者を二人も放免してしまった。そこで僕は二年の間は西蔵(チベット)に旅行し、拉薩(ラッサ)に遊んで、剌麻教(らまきょう)の宗長とたのしい数日も暮した。君はあの諾威人(ノールエじん)シガーソン[#「シガーソン」は底本では「シガーリン」]の、有名な探険記を読んだかもしれないが、しかしおそらく君はその中で、君の友人の消息については、何物も知るところは無かったろう。