それから僕は波斯(ペルシャ)を通りメッカを見物し、それからちょっとではあったが、カァールトウムのカリファに、興味ある訪問をした。そしてこの事は僕は、外務省には通報しておいた。フランスに帰ってからは、数ヶ月の間、コールタールの誘導物の研究に没頭し、南方フランスのモントプリーエの研究所では指導してやった。それから僕は、満足する結果を得、またロンドンには、僕を狙う敵がただ一人っきり居ないと云うことを知ったので、もう出発しようと思っていた矢先に、かのレーヌ公園の魔の事件があったので、僕の行動は急に敏活となった。この事件は、事件そのものも、大に僕にさし迫るものもあったが、またその外に、ある個人的な、特殊な機会も含まっておるように思われたのだった。僕は早速ロンドンに直行したが、まず自らベーカー街に現われて、ハドソン夫人を驚かして、癪を起されてしまった。弟のミクロフトは、実によく僕の書斎を管理していてくれて、新聞紙などまでが、全く昔日の通りにきちんと整理されていた。