「僕はちらりっと窓の外を見た時に、彼等の見張りを見止めたのだ。その者の名前はパーカーと云い、咽喉を締めて追剥するのが稼業、別に大して害意のある男でもなく、口琴の名手だ。僕はもちろんこんな男は意にも介しないが、しかしその背後には、もっともっと怖ろしい人物が居るのだ。あのモリアーテー教授の腹心の友で、かつて僕に断崖の上から、大石をころがして落した男、――ロンドン中で最も狡智な、そして恐ろしい犯罪者さ。この人間がすなわち、今夜、僕に尾(つ)けたのだが、ところがワトソン君面白いことには、その人間がかえってこの俺たちに尾(つ)けられていることは知らないのだ」