これだけをちょっと見ただけでは、ただますます事態が不可解になるばかりであった。まず第一に、何のためにこの青年が、内側から扉(ドア)に鍵をかけたのかと云うことが、はなはだ解釈に苦しむ疑問である。もっとも犯人が兇行後、鍵を下して窓から遁(に)げ去ると云うことは、考えられることではあるが、しかし窓の高さは少なくとも二十呎(フィート)はあったし、かつその下には、蕃紅花(さふらん)の花床があって爛漫と咲き埋(うず)まっているのであったが、その花床にも、また地面にも、また家屋から道路までの間の狭い芝生にも、踏みしだかれたような形跡は全く認められなかったのであった。したがって扉(ドア)に鍵をかけたのは、青年自身に相違ないと云うことになるが、しからばその死因はどこにあるのであろう?