ホームズは更に言葉を続けた。
「ある程度までは、彼も精進してるよ。彼は鉄のような神経の持ち主だ。彼には負傷した人食虎を追跡して、下水溝にまで這い下りたと云う逸話が、今でも印度(いんど)で話題になっているほどなんだよ。木にもある処までは、非常にいい形で伸びて来ながら、急に変な恰好に変化してしもうのがあるが、君、ああしたことはやはり人間の上にもあることなんだね。これは僕の持論なんだが、つまり個性の進展と云うことも要するに、その先祖の一貫した全過程を表現しているもので、また途中で急激に、善悪いずれかの方面に転換するとも、やはり血統の上の、強いある影響が、そうさせるのだと思うよ。つまり云ってみれば、人間と云うものは、それぞれの家庭史の梗概なんだね」